コラム

◆場所づくり

「場所づくり」 = 「形を与える」 + 「意味を付加する、掘り起こす」

アーバンデザインの基本には「場所づくり」があります。人が関わってつくるものであり、成り立ちの経緯や理由が伴うと考えています。

対象が道路などの公共空間である場合、「形」を決めるときには、まず人の行動・動線は前提となります。利用者の動きの動機を与えること、動きが誘発されることは、対象となる空間を取り巻く環境(建物の出入口など)により決まります。これらは、公共空間の機能性だけでなく快適性も決めるのです。

公共空間には、行政が所有する設計基準やマニュアルと呼ばれる、施設をつくり維持するための様々なルールがあります。このルールは、施設の安全性や機能性を確保する際に重要になりますが、デザインの説明性をこうしたルールにのみ求めるという対応からは、「施設」はつくられても「場所」はつくられません。

歩道を歩いていたら、急に空を見上げることも、道端の緑を眺めることも、人と出会って会話することも、疲れたらどこかに腰かけることもあるでしょう。こうしたことを自然に行うことができることが、公共施設を「場所」としてつくっていくときに大事だと考えます。そういうことが誰かの妨げになることなく、何気なくできる「場所」がある街は、とても贅沢です。そういう「場所」は、1本の街路樹や、1つのスツールといった小さな仕掛けの積み重ねでつくられるものかもしれません。

そして、「場所」の意味を掘り起こし、意味を与えるというなかには、その地の歴史を受け継いでどのように次につなげていくかをデザインすることでもあります。古いものをそのまま残すことには限界があります。常に有形・無形の歴史的資源が発するメッセージを受け取り、何を残し、何をつくり変えていくかという、継承のデザインは「場所づくり」の大きな課題です。

「公共空間」を「カスタマイズ」する

公共施設は、行政の財産として、施設(例えば道路や公園など)の規格や種類によって管理者は異なります。国、都道府県、区市町村と施設の規格・規模で分類され、同じ都や区の施設でも種類が異なると管理者は分かれます。そして、施設の種類別、規格別、規模別にそれぞれのルールに基づいてつくられ、管理されます。例えば、日常の生活空間として考えてみると、一つの街のなかに国道と都道、区道(市道)、区立公園など様々な種類の施設に囲まれていることがわかります。

customize  注文で特製する

公共空間のデザインで特定のテーマをもつことはあまり一般的ではないとされています。不特定多数の「みんな」の空間だからです。そして不特定多数の代弁者を行政が担ってきました。だから、国、都道府県、区市町村と主体が替わるごとに異なる仕様となりがちでした。

「カスタマイズ」するとは、特別にあつらえることです。既製品ではなく、注文品であることです。

そして、公共施設は、「街」の一部です。「街」に暮らし働く住民に共有されるものとして捉えたとき、施設それぞれがバラバラにつくられるより、共通デザインでつくられる方が「街」の一体感は生まれます。そして、人々が「街」に関心を持ち、愛着を生むものになっていくはずです。

よく行政の方は管理のしやすさを、施設のつくりやすさのなかで重要視されますが、人々に関心をもたれ、愛情を注がれる対象になりうるような施設になって初めて、大切にされ、それが維持されることにつながっていくのではないでしょうか。そのためには、地元の人が自らつくることや維持することに参加できるような機会や仕組み、デザインの工夫が求められます。

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