コラム

◆エリア・マネジメント

エリア・マネジメント = 日々営まれる「心ある」風景の管理運営から、街の文化はつくられる

まちづくり、街づくりという言葉で鍵になるのは、公共の存在です。“私が”、ではなく“私たちが”として複数形で語られる先には、公共の概念、空間の広がりが伴います。個々の敷地は道路などの公共施設を介して街を形成します。そのため、まちづくり、街づくりという言葉には、公共空間における環境の向上が不可欠だと考えています。

施設の機能性を確保することだけを優先すれば、無味乾燥なものになりやすく、味もそっけもない空間になります。道路は、ひたすら通過するための施設であって、立ち話をする場所ではないことになります。そして、街路樹は、いつ倒れるかもしれない危険なもので、車の見通しを妨げるおそれがあるものになります。

しかし、人々の生活空間としてみれば、美しい舗装や街路樹からなる快適な道路空間は、使う人の心に残る日々の風景をつくります。

心ない管理は、風景を殺伐としたものに変えてしまいますが、心ある管理は、風景を美しく豊かなものにすることができます。

エリア・マネジメントとは、街を魅力的にするための心ある風景の管理運営なのではないでしょうか。それは、町内会が行う清掃や防犯なども含まれるでしょう。安全で安心して快適に過ごせる街の姿は、視覚的に風景として現れてきます。なにより人々がリラックスして過ごすことができます。風景を支えるための様々な、目に見えない仕掛けも必要でしょう。そうした街の雰囲気は、行政の一般的な公共サービスではつくることはできません。地元が、自分たち仕様で行ってこそ初めてつくられるものです。

エリア・マネジメントには答えはありません。自分たちの街をどう快適にしたいのかは、自分たちが寄せる関心によってアプローチも異なるし、試してみないとわからないからです。そして、公共サービスとの関係においては、行政と役割分担しながら進めた方がよいと思います。活動原資を自らが負担するためのサービスを明確にする必要があるからです。

実施していくためには、地元が管理運営の主体となる覚悟と責任をもつ仕組みと動機づけとなるテーマが必要です。また、カウンターとなる行政も、これまでの経験に基づく一般ルールを地元に押し付けるのではなく、意欲のある地元組織に協力し、特徴的な街をつくり育てるための特別な仕組みづくりに取り組む勇気も求められます。

関係者が初めてのことに挑戦した暁に得られるものは、街の魅力や個性ではないかと考えます。一般ルールの元では標準的な街にしかなりませんが、特別な工夫や配慮が施されれば特別な街に生まれ変わります。都市の文化とは、「活性化」の号令で行われる一過性のイベントではなく、地味かもしれない活動を地道に続けられる環境のなかから、生まれ、育まれる、確かなものではないでしょうか。

エリア・マネジメントは、行ってみれば当たり前の、でも行わなければ夢の仕掛けと言えるでしょう。

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